気ままに旅気分
剣 山(徳島県三好郡東祖谷山村)

徳島県のてっぺんで、おにぎりを食べよう。突然そんなことを思いついたのは、珍しく早起きして、犬と散歩していた時のこと。気持ちのいい早朝の風に吹かれたせいか、早くも、私に食欲の秋がやってきたようです。

さっそく特大おにぎりをリュックに詰めて、めざすは徳島のてっぺん、剣山。貞光町から国道438号を南に上り、一宇村に入るとススキがちらほら見えはじめました。さらに山道を走り、車窓から吹き込む風がひんやりしてきたころには、見の越に到着。

見の越からは、登山道を歩くか、リフトに乗るか二つのコースに分かれます。30年ぶりの剣山登山となった私が選んだのは楽々リフトコース。足の下には青紫のかわいい花を咲かせたリンドウ、紅葉が始まりかけた木々の香り、おいしい山の空気を味わいながらの15分間の快適リフト登山。心も体も「ふわーっ」と運んでくれました。

リフト到着地(標高1750メートル)の西島駅から頂上までは、尾根道、大剣道、遊歩道と三つの登山コースに分かれています。

私は、少しなだらかな大剣道を行くことにしました。お花畑に咲く草花や辺りの山々をながめながら、一歩一歩踏みしめて登りはじめます。15分ぐらい歩くと大きな岩に寄り添うように建つ大剣神社に着きました。少し休憩して、クマザサの間をさらにのっそりのっそり・・。

「こんにちわ」すれ違う人とのさわやかなあいさつに励まされ、さらに頂上を目指します。頂上が近くなるとゴツゴツした岩や白骨樹が目立ち始め、まさに私のイメージどうりの剣山が目の前に広がってきました。

ついに四国第二の高峰剣山山頂1995メートル地点に到着。汗だくになった体を包むひんやりした山の空気が何とも心地よくて、しばし放心状態。ほっと一息ついたころ、いよいよ特大おにぎりの出番です。おそれ多くも大剣神社でいただいた御神水と一緒に大口あけてパクリ。あのおにぎりの味はずっとずっと忘れることはないでしょう。

てっぺんで食べたおにぎりと登頂できた満足感でエネルギー全快。若返りの水と言われる御神水の効果もあったのか、少々険しい尾根道を通っての下山も難無く終えることができました。

剣山は、さりげない手助けで登山初心者にも山頂に立つ感動を体感させてくれるやさしい山でした。これから迎える紅葉の剣山は最高に美しいといいます。今度はドレスアップした剣山を登ってみたいものです。

1998年9月掲載


思い出して一言

私が剣山に登った頃、女優の松たか子さんが「天涯の花」の舞台のために下見にいらした直後だったので、剣山はずいぶん松たか子ブームになってました。

頂上ヒュッテの新居さんは有名なのにとってもきさくな方で、あめゆとおでんをごちそうして下さいました。ごちそうさまです。

その後、この記事を見て、何人かの方が剣山に行ってきましたという便りを下さいました。ありがとうございました。(2000.2)


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