気ままに旅気分
鴨島町(徳島県麻植郡鴨島町)

抜けるような青空の中、ゆらゆらゆらと地上57メートルの空中散歩。吉野川も四国山地も鴨島町の町並みも、360度の景観をひとり占め。そんな夢いっぱいのぜいたくな空間に私を運んでくれたのは鴨島町・吉野川遊園地にある四国一の大観覧車(ビッグドリーム)。

大のおとながひとりで観覧車に乗って、ぽわーんとしあわせ気分にひたるのもたまにはいいものです。 吉野川遊園地を出て、大観覧車から見下ろした鴨島の町を歩いてみることにしました。まずはJR鴨島駅前で、鴨島町出身の喜劇俳優「五九郎丈」が描かれた「ノンキナトウサンの碑」にごあいさつ。

そこから銀座商店街と書かれたアーケードが見えました。中を歩いてみると、今では数多くの商店が閉店し、シャッター街となってしまっています。「昔は、にぎやかだったんやけど・・」通りを行くお年寄りはあきらめ顔で話してくれました。

でも、この商店街を活気付けようと頑張っている人たちに出会うことができました。ちょうど私と同じ世代の「街角コンサート実行委員会」(代表・那須幸雄さん)のみなさんです。

コンサートやフリーマーケットを銀座商店街で開催しようと発案し、今年の9月から活動を始めているそうです。忙しい仕事の合間に、いろいろなアイデアを出し合い、活発に話し合う彼らの姿は、静まりかえった商店街で一際輝いて見えました。

昼食後は、町役場前で開かれていた見事な菊人形展を見て、さらに藤井寺や鴨島温泉を散策し、大観覧車からも見えた江川・鴨島公園に着いたのは少々肌寒くなったころでした。

この公園は障害者にやさしい公園として整備され、三つの通りに別れています。中でも「江川の昔話どうり」では、タッチセンサーに触れると愉快な石のオブジェが昔話を語ってくれます。楽しくて何度も聞いるうちに、おどけた語りの中に環境保護を考えさせてくれる言葉が含まれていることに気づきました。目で楽しむだけじゃなく、体や頭で遊ぶことができる心くばりいっぱいの公園です。

鴨島町では、今と昔を一度に体感することができました。時代の流れとともに変化していく建物や環境や人。昔の良さを認めつつ、それを子どもたちに伝え、これからの時代の担い手を育てていくのは、「私たちの世代」の役割のような気がします。

ガラにもなく真剣に考えながら夕暮れの公園を歩いていると、ドンガン池に住むカッパのおやじが、こっちを向いて「にやり」と笑っていました。

1998年11月掲載


思い出して一言

今鴨島町の駅前商店街のアーケードの中に「アートパフォーマンス」と称していろんな方の作品を展示してます。この取材をきっかけに、私の作品も展示していただいています。

鴨島町のまちかどコンサート実行委員会のメンバーはとっても活動的です。これからも、私にできることがあればお手伝いさせていただこうと思っています。(2000.2)


前回 ホームへ イラストマップへ 旅気分のインデックスへ 次回