気ままに旅気分
美郷村(徳島県麻植郡美郷村)

美しい郷と書いて美郷村。その魅力的な地名にひかれ、一度行ってみたいと思っていた村です。でも出かけたその日は朝から春の嵐。少々不安だけど「なんとかなるさ」。運を天に任せて雨風吹き荒れる中、美しい郷をめざしました。

美郷村に着いて最初に訪ねたのは「梅工房」。村の梅農家の人たちが梅干しなど様々な梅加工品を製造販売するグループです。

そこでお会いできたのは梅農家の西ヨリ子さん(56)。「うちの梅の木は30年前私が嫁に来た時に植えたものなんです。だから私は梅と一緒に成長させてもらってます」雨で梅の花見はあきらめていたのですが、そんな西さんの話を聞くとどうしても見たくなりました。無理を言って西さんに、別枝山字宗田の梅農園まで案内していただくことに。

満開の時期は過ぎたものの、山の斜面一面にみごとに咲き誇る梅の花は想像以上の美しさでした。郵便局にお勤めのご主人、西隆弘さん(59)からは若いころ山地で暮らす人の所へ配達に行って買い物を頼まれたことや大雪の中の出勤など、村の郵便局ならではの興味深い話を聞くことができました。西さんのお宅は、なんだか居心地が良くてすっかり長居をしてしまいました。

今回の散策では、美郷村自慢の梅やホタルの時期から少し外れたこともあって、観光より村で暮らす人たちとのふれあいを楽しみにしていました。そこで村の人たちに「だれか話題の人紹介して下さい」と言うと、みんなが口をそろえて挙げてくれたのは、なんと村長さん。これはお会いせずに帰るわけにはいきません。

お忙しい村長さんを待たせていただくことにしました。待つこと三十分、村長室に現れたのは気迫のオーラを漂わせた伊井昇村長(65)。なんとも型破りな村長さんです。まるで近所のおじさんと話してるようなきさくな話ぶり。でも政治や自然保護への情熱は青春時代を生きる若者のようです。120歳まで生きるという伊井村長、まだまだ人生半ばです。伊井村長率いるこれからの美郷村がとても楽しみです。

帰りに立ち寄ったのはヘルスランド美郷。ぽかぽか温泉につかって「はぁーっ」と大きく一息つくと体がとろけそうに軽くなっていきました。

「なんとかなるさ」と出かけた美郷村、あったかい人たちに出会えたおかげでほんとになんとかなりました。日々いろんなことがあるけれどこれからも「なんとかなるさと笑って生きていこう」ふくらみはじめた桜のつぼみをながめながらそんなこと思っていました。春は必ずやって来ます。

1999年3月掲載 


思い出して一言

4年間続いた仕事も美郷村で最後です。西さんのお宅では、ずいぶんゆっくりさせていただきました。手作りのヨモギだんごの味は今でもはっきり覚えています。

梅の時期になったらもう一度行きたいと思うのですが、なかなか実現しません。


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